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2010年4月18日 (日)

輸入車は速いクルマではない

引き続き、僕の著書「国産車の予算でかしこく輸入車に乗ろう」(99年ごま書房刊)より、再録。

第一章
こんな誤解をしてはいないか--
輸入車を狙う前に知っておくべきこと。

2・輸入車は速いクルマではない

これもまた、誤解されていることだ。「速度無制限のアウトバーンで生まれたドイツ車なら、さぞかし速かろう」「スーパーカーの血を引くイタリア車なら、きっと国産車なんかぶっちぎりに違いない」と思って乗ってみると、「アリャ」とずっこけるくらい遅い。たとえばサーキットに持ち込んで全開テストなどをしてみると、タイムが出るのは圧倒的に国産車。街中でも、より小さな排気量の国産車にスタートダッシュで置いていかれる輸入車がほとんどだ。

30年以上も前、スーパーカーブーム全盛の頃までは、たしかに同排気量なら大抵輸入車の方が速かったものだ。日本がようやく一家に一台の時代を迎えた当時は、まだ実用エンジンに毛が生えた程度のクルマが大半であり、足回りもトラックやバンなどの実用車のそれをアレンジしただけ。一部のスポーツカーには先進技術が取り込まれていたが、それとて進んでいた輸入車のコピーの粋を出ないもので、先端とは言いがたかったのである。

ところが、それからの国産車の進歩はめざましかった。その理由のひとつが70年代後半の世界的な排ガス規制。排ガスをクリーンにし、なおかつ性能を落とさないために、国産メーカーはそれこそ最先端技術の研究に惜しげなく金をかけ、結果として、ようやく諸外国に追いついていた日本の技術は、一気にそれを追い越すところまで行ったのだ。足回りに関しても、資金力に余裕のできた各メーカーは、自前のテストコースを整備し、ドライバーを養成して、日本人ならではの働きバチぶりで研究に励んだ。

とくに効果があったのは電子制御の分野で、このおかげで燃料を完全燃焼させ、ハイパワーとクリーンな排ガスを両立させることができたと言っていい。さらに生産技術の研究で、ツインカムや4WDといった手間のかかるメカニズムの量産に成功したことも、これに拍車をかけた。

こうして、おおむね80年代半ば以降、国産車はこと技術的な面ではつねに世界の最先端を歩むようになったのである。速いのも当然なのだ。

ところが、この速さを発揮するところは、ご存じのとおり国内にはない。速度無制限の道路など、残念ながら日本にはないのだ。

で、国産車はこの速さを、もっぱら体感的な速さとして感じさせることに腐心した。至る所にある信号からのスタートダッシュや、短い直線での追い越し加速、つぎつぎ表れるカーブでの切れのいい身のこなし、といった、分かりやすい形でそれを表現しようとしたわけだ。

そこで輸入車も負けじと……かと思うと、そうではない。なぜなら、日本人のような体感的な速さなど、外国人は求めていないからだ。

世界のどの国と比べても、日本ほど信号が多く、急カーブが多く、クルマが混雑している国など、そうはない。もちろんどの国でも都市部はそれなりに混んでいるし、信号もあるが、その割合は日本の比ではなく、ちょっと郊外に出れば、淡々とある程度のスピードで流れている。高速道路に入れば、延々とアクセルを踏みつづけることができる。とくにヨーロッパでは、その平均速度は高い。

こういう環境では、国産車のようにちょっとした操作であまりクルマが敏感に反応してしまうのは、疲れるものだ。むしろ高速でも安心して踏めるブレーキや、多少慌てて操作しても危険な姿勢に陥ることのない、安心感のある足回りが求められる。つまり、輸入車は瞬間的な速さではなく、継続的な、安定した速さを狙って作られているのである。

たとえばトヨタカローラと、ドイツのVWゴルフを比べると、この違いは一目瞭然だ。しゅんしゅんと混んだ都市部を走るには都合がいいカローラだが、時速100㎞を越えればハンドルは落ち着きをなくし、急ブレーキを踏めば、たとえABSつきでも、安定感は急速に失われてしまう。一方、ゴルフは決してダッシュのいいクルマではなく、操縦性も軽快ではないが、時速150㎞を保って走りつづけても、疲れない安定性を持っている。どちらがいい、という問題ではない。速さにも、質の違いがあるということなのだ。

それを知らずして、輸入車に国産車的なわかりやすい速さを求めるなら、きっとがっかりしてしまうことだろう。もっとも、いまだに“輸入車=高級車”と思い込んでいる人の多い日本では、輸入車というだけでレーンチェンジで譲ってもらえたり、高速道路で前を行くクルマがよけてくれたり、という機会は(幸か不幸か)多い。そういう意味では、たしかに輸入車は“速く走れる”クルマかもしれないけれど……。

●2010年現在の追記
ここに記したような走りの味付けの違いは、じつは輸入車だから、国産車だからという違いではない。海外市場に輸出される日本車は、ちゃんと現地の好みに合わせて、細やかに味付けを変えられている。とくに欧州市場向けはクラスを問わずどっしりと安定したハンドリングが与えられていて、海外でレンタカーを借りてよく知った日本車が出てきても、まるで違うクルマのような走りを見せるのだ。

もっとも、近年のアメリカの消費者はやたらと機敏なハンドリングを好む傾向があり、それに引きずられて日本仕様よりステアリングの応答性が敏感、というか落ち着かないクルマもあるようだ。

メーカーの開発者たちは、それを「クルマは道が育てる」という。アウトバーンで超高速での安定したハンドリングが求められるのも、混んでいるくせにやたらと流れの速い最近のアメリカで機敏なハンドリングが好まれるのも、その道路事情が求めたニーズというのだ。

それと引き比べると、日本の道路は街中では相変わらずゴーストップが多く、国土の多くが山地だから、機敏な発進停止性能や山道での軽快なハンドリングが求められる一方で、最近は高速での落ち着いたクルージング性能をも求められるという難しいニーズの市場だ。それに対する回答も、まだメーカーによりまちまちの感はある。

とくに昔は新車が出るたびに自動車雑誌が無節操に峠やサーキットで全開テストをして(僕も恥ずかしながらその片棒を担いでいたのだが)、一般消費者の使い方とかけ離れたレベルでの優劣を日本人全体のニーズであるかのように論じていたから、メーカーもそれに引きずられてやたらと限界性能にこだわり、引き換えに低速域での味が台無し、というクルマも多かったものだ。

それでも、最近はそういう無責任な論評が減ったこともあってか、ひと昔前と比べると大人の乗り味を実現するクルマが増えてきている。とくに世界戦略車の中には、輸入車との違いを優劣ではなく、個性で語れるクルマが出てきていることは、喜ぶべきことだろう。

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コメント

外車はどれも速いと思います。外車はどんなに小さくても時速240キロは出ますが、国産車は小さいものだと140キロしか出ないし、大きくても180キロしか出ません。もっといえばGT-RやNSXならにっくき外車どもにも負けないかもしれませんが。

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