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2010年4月19日 (月)

輸入車は最新が必ずしも最上ではない

引き続き、僕の著書「国産車の予算でかしこく輸入車に乗ろう」(99年ごま書房刊)より、再録。

第一章
こんな誤解をしてはいないか--
輸入車を狙う前に知っておくべきこと

3・輸入車は最新が必ずしも最上ではない。

国産車のモデルチェンジ周期は概ね4年だ。その間、2年目でマイナーチェンジが行われるのが通例だが、それは根本的にクルマが変わるわけではない。ちょっとした不都合を改める以外は、フェイスリフトと呼ばれるような、細部のデザインの変更、要は商品力向上という名の若返りを図っているだけだ。

この周期は最近、少し見直され、伸ばす方向にはあるが、大抵の国産車はモデル末期、つまり新車デビューから4年後には、販売台数もデビュー当時より大きく落ち込んでいるのが普通だ。つまり国産車は、もとより4年で陳腐化する宿命にある。またはそれを狙って作られていると言ってもいい。

おかげで次に出たクルマは前のモデルとはまったく違うクルマとなり、技術、デザイン、時にはコンセプトまで、大きく変化して登場してくる。つまり最新型は、つねに羨望の価値がある商品となることを狙って登場してくるわけだ。

これに対して、輸入車、とくにヨーロッパ車のモデルチェンジ周期は長い。大衆車クラスでも6年前後、以前のメルセデスベンツなどは、10年も同一モデルを作りつづける例が珍しくなかった。しかも、これらはデビューから最終モデルまで、坦々と、コンスタントな販売台数を保ちつづけるのだ。これは消費者の考え方の違いもあるが、メーカーの姿勢として、目先の変化で売るのではなく、始めから高い完成度を持ち、長く愛される物を作ろう、という考えがあるからだ。

当然、次のモデルチェンジもまた、長いこと売れる出来のいい物を、と考えて行われるわけだが、その結果、出たてのニューモデルが必ずしも最上の物ではない、という所がある。

国産車は、その商品寿命が短いこともあって、入念な市場調査をし、今、という時代にあったジャストなものを、その時点で出来る範囲で完璧な形で作る。逆に言うと、次の時代を見据えるような、長期的な視点は入っていない。旧型がたちまち魅力を失ってしまうのもそのせいだが、おかげで無理な冒険も不要で、信頼性も確保され、世界一の生産技術のおかげもあって、とりあえず、新型を手にした人は、次のモデルチェンジまではほぼ望んだような満足が手に入るわけだ。

対する輸入車は次の10年間にそのクルマに求められるものはなにか、という提案や開発者の考えが最大限に盛り込まれ、ときに無謀とも思えるような先進思想を盛り込んで作られる。

するとどうなるか、というと、最新型は必ずしもその時代にぴったりフィットしているとは限らないのだ。思想的な失敗、ということもあるし、技術的に時期尚早だった、ということもある。おかげでえらく使いずらかったり、故障が多かったり、期待した性能が発揮できなかったりするのだ。

メーカーではこれをなんとか修正するべく、毎年、ときには数カ月単位で手を入れる。もちろんできが良くて売れ行き好調でも必要な改良は常に施す。4年で終わりではないのだから、じっくりと、さらに愛されるために熟成を続けるわけだ。メルセデスベンツやBMW、フォルクスワーゲンといった日本では定評のあるドイツのメーカーでも、新型登場当初はどこかしらに不都合があり、改良される、ということが繰り返されているのだ。その不都合は大抵、ドアの立て付けが悪いとか、ある速度域で妙な音が出る、といった些細なことだが、時には大がかりなリコールの対象になることもある。

だから輸入車購入に当たっては、出たてのニューモデルは必ずしも狙い目ではない。2~3年たって初期の問題もかたづき、完成度が高まってからのモデルのほうがトラブルもなく、使い勝手もいいことになる。これは新車のみならず、中古車購入でもそうで、同じ年式で旧型と新型がある場合、旧型のほうが完成度が高く、使いやすい、という例は多い。モデル寿命の長い輸入車では、旧型がいきなり古臭くなることは少ないから、なおのことそうだ。

そろそろ国産車でも、旧型になっても堂々と胸をはって長く乗れる“主張”を持ったクルマが出てきてもいい頃だと思うのだけれど……。ユーノスロードスターなどは、もしかするとそんなクルマになりそうで、期待している。

●2010年現在の追記
この原稿を書いてから10年。皮肉なことに最近の輸入車は以前よりモデルチェンジのサイクルがやや早くなる一方で、国産車のモデルチェンジサイクルは逆に伸びるという傾向が強くなっている。変化の早い現代にあっては、輸入車メーカーといえども10年などという長いスパンで未来を見通すことは難しくなる一方で、市場が世界に広がっている国産車も、目先の変化だけで売るようなビジネスはしにくくなっているのだろう。

それでも、出たての輸入車にアラが出がちという傾向は今なお健在(?)で、最近でも、02年に登場したメルセデスEクラスのブレーキシステムは信頼性に難があり、リコールされた挙げ句に、マイナーチェンジで根本的に機構を改めるという事例も起きた。

革新的であることと、絶対的な信頼性を持つことを両立させることは、素人が想像する以上に難しいものだ。かのトヨタが見舞われたプリウスのリコール騒動もその一例だろう。メーカーを擁護しておくと、トヨタの一連の事件は本来ならマスコミにバッシングされるほどの問題ではないと思っている。そもそもハイブリッド車という新しいメカニズムのフィール自体が旧来の自動車の乗り味とはかなり異質なもの。問題になったブレーキの効きも、役員が述べていた通りフィールの範疇に属する話だと思う。

革新的な商品が市場にきちんと評価され、正しく受け入れられるまでには時間がかかるものだ。ときにはそれが理解されず、あらぬバッシングを受けてしまう事態にも陥る。しかし、それでも革新に挑戦しないことには未来は来ない。つくづくメーカーのエンジニアは大変だろうな、と同情を禁じ得ない。

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