« ちょうどいい立ち位置を得たアウディ | トップページ | 乗れば意外とよかったオペルと欧州フォードだが・・・ »

2011年6月14日 (火)

自動車ジャーナリストの運転技術

学生時代、ラリーのまねごとをしていた僕は、自動車雑誌の熱心な愛読者だった。巨匠こと徳大寺有恒氏が脚光を浴びていた当時は、自動車ジャーナリストも花形職業のひとつ。きっとみんな運転がうまいんだろうなあ、と憧れていたものだ。

で、自分自身がその業界人のひとりになってわかったことは、「ありゃ、必ずしもみんなが運転うまいわけじゃないのね」だった。もちろん、そのへんのオジさん、オバさんレベルではないが、サーキットではおそろしく速いのに、車庫入れが苦手な人は珍しくないし、逆に街中の縦列駐車は一発で決めるくせして、峠道に行くとからきし駄目、というシティ派もいる。

それでも、クルマの個性やメカニズム、歴史、生産技術やエンジニアの人物録など、語るべき分野を持っていれば、立派にジャーナリストとして食べていくことはできる。運転技術だけが自動車ジャーナリストの資質ではなかったのだ。

レーシングドライバーの運転がうまいのはたしかだが、それぞれに個性はある。名の知れたドライバーでも、たんに反射神経だけで走っているような人もいるし、サーキットでは武闘派として名を馳せているが、街中では観光バスのような模範運転の人、駆動方式やクルマのサイズなどによって、極端に得手不得手が出る人もいる。

ただ、多くのレーシングドライバーの助手席に乗ってみると、結局のところ運転のうまいヘタは資質もさることながら、知性がかなり大きなウエイトを占めているというのが実感だ。クルマが物理の法則にのっとって走っていることを理解した上で、現在の状態を正しく認識し、自分が行うべき操作や持ち込みたい挙動を実現させるためには、どんな姿勢変化や荷重移動を、どのような方法で起こすべきかを冷静に、論理的に判断し、実行できる人が“うまい”のだ。

その判断の前提となる周囲のクルマとの位置関係や路面状態、乗っているクルマの重量配分やエンジン特性などを感じ取るのも知性のうち。素人のドライバーには、どこでもどんなクルマでも、ステアリングやペダルを素早く操作して、まるでTVゲームみたいに荒っぽく走るのがうまいと勘違いしている人も多いが、けっしてそうではない。本当にうまいドライバーは、MT車でもいつ変速したのかわからないほどスムーズに操作するし、たとえドリフト中でもクルマの姿勢はピタリと安定していて、目をつぶって乗っていても全然怖くないほどだ。

「輸入車中古車情報」の創刊以来、ご一緒させていただいている中谷明彦氏は、そうした意味でもっともうまいドライバーのひとりだ。

« ちょうどいい立ち位置を得たアウディ | トップページ | 乗れば意外とよかったオペルと欧州フォードだが・・・ »

業界こぼれ話」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 自動車ジャーナリストの運転技術:

« ちょうどいい立ち位置を得たアウディ | トップページ | 乗れば意外とよかったオペルと欧州フォードだが・・・ »