カテゴリー「輸入中古車購入術(著書の再録)」の51件の記事

2011年11月19日 (土)

世界的ヒットのニューミニは中古車でもお勧め

引き続き、僕の著書「国産車の予算でかしこく輸入車に乗ろう」(99年ごま書房刊)より、再録。

ミニ

1956年のスエズ危機を発端とするオイルショックで、燃費のいいクルマを作れ、という至上命令を受けて生まれたのがミニ。当時のメーカーはオースチンだったが、その後の英国自動車界のリストラでメーカーがころころ変わり、現在はローバーからリリースされている。

1ℓ、4気筒のエンジンを横置きにし、トランスミッションとデフを積み重ねることでスペースを稼ぐ、というアイデアで、最小の外寸に最大の居住空間を実現した設計者、アレック・イシゴニスは天才と呼ばれ、サーの称号を与えられるに至った。

デビューから40年という長寿車だけに、メカニズム的にはさすがに古さを隠せず、乗り味は軽トラックのようだし、性能的にも国産軽スポーツカーより遅い。あくまでもかわいさで人気を博しているというクルマだ。

とはいえ、信頼性に関しては年々改良が加えられており、とくに91年以降の燃料噴射方式のクルマなら、女性が乗るにも問題はない。もっとも、オイルのパッキンは旧式だから多少の漏れは“常識”だし、電装系や足回りの消耗品の寿命は短い。国産車に比べればひんぱんな手入れ(6カ月点検をキチンとすればまずOK)は必要だ。

中古車のタマ数も多く、地方へ行ってもシンプルなメカニズムゆえ、意外と扱える工場はみつかる。

2000年にはついに生産を終了と言われているから、最後に試しておくなら今だが、これを輸入車の代表と思うべきではない。

●2011年現在の追記
この原稿を書いたのは、BMWの手になるニューミニが登場する前のこと。02年に登場したニューミニは、オリジナルミニのイメージを巧みに取り入れ、ある種のキャラクターグッズ的な人気を得て、世界的なヒットとなった。

で、そのニューミニがまたよくできたクルマなのだ。デザインはもちろん、クオリティもプレミアムレベル。スイッチひとつを取っても凝ったデザインがなされ、持つ歓びをそそってくれるし、乗れば乗ったで長年FR一筋にやってきたBMWのFF処女作とは思えないぐらい足まわりがしゃんとしていて、ゴーカートのようと評される軽快なハンドリングと、BMWらしいスタビリティが両立されている。たんなるミニの衣を被ったキャラクターグッズではなく、ちゃんとしたプレミアムコンパクトに仕上がっているのだ。

クライスラーとの共同開発になるエンジンは、BMWの作品としてはややガサついた印象だが、ベーシックグレードでも必要十分な動力性能はあるし、MTとの組み合わせなら、欧州の小型車らしい操る歓びが味わえる。もっとも、CVTはイマイチのフィールで、この点は07年に出た現行モデルが採用するオーソドックスなATのほうがいい。エンジンもBMWが主となって開発された(こちらの共同開発先はプジョー)現行のほうがスムーズなのだが、一方でシャシーのできばえや作り込みのクオリティは先代(初代ニューミニ)のほうが好印象だ。

初代ニューミニなら、今では100万円以下から中古車が流通しているし、信頼性も古いオリジナルミニとは段違い。もっとも、程度の悪いクルマをつかまされた場合は、シンプルなオリジナルミニより修理代は高く、古いミニとは違ってだましだまし乗る楽しさもないクルマではある。

ニューミニの中古車は人気でリセールも高いから、なるべく程度のいいクルマを、それなりの価格(といっても150万円以上見れば、かなりのクルマが手に入る)で買うのがお勧めだ。ツートーンカラーが選べることもあって、高性能版のクーパー以上が人気だが、ふつうに使うなら、比較的安いベーシックグレードのワンで十分だろう。MTをカチャカチャ操るのも楽しいから、一考をお勧めする。

ちなみに、オリジナルミニも今なお専門店が多く存在する人気モデル。中古車相場もヘタするとニューミニより高価なクルマさえあるほどだ。快適性や信頼性はニューミニにおよぶべくもないが、チューニングやドレスアップを楽しみ、壊れることもふくめてクルマとのつきあいを深めるには、これはこれでアリ。トラブルシュートも進んだ今では、専門店なら比較的リーズナブルに維持できるし、店に集まるファンとの交流などの、新しい出逢いも楽しめるだろう。

2011年7月14日 (木)

外資の手で甦ったジャガーの味

引き続き、僕の著書「国産車の予算でかしこく輸入車に乗ろう」(99年ごま書房刊)より、再録。

第五章 国籍・ブランド別魅力と弱点の研究

イギリス車編

90年代のクルマなら不安は少ない

今も手作りを貫く工芸品、ロールス・ロイスから、20世紀が生んだ傑作大衆車とされるミニまで、イギリスのクルマのラインアップは奥が深い。かつてはひどく信頼性が低いことでマニアにしか乗れないクルマとされていたが、一部の手作りのクルマを除けば90年代に入ってそれも改善され、品のいいインテリアやたたずまいを持つ、上質な実用品となっている。

ジャガー

“自動車界の至宝”ロールス・ロイスやベントレーは、一般には少し敷居が高すぎる。誰もが知っていて、かつその気になれば乗れる英国の高級車、ということなら、やはりジャガーが筆頭だろう。

車名の通り、猫を思わせるしなやかな乗り味や、木と革で仕立てられたインテリアの居心地のよさ、低く、長い優美な外観は、ベンツやキャデラックといった他国のライバル車にはない、英国らしさ。実際それがこのクルマの最大の売りだ。

80年代までは、電装系の耐久性が極端に低く、とくに日本のような高温多湿の風土では使いものにならなかったが、90年代に入り、日本製のエアコンを使うなど努力・研究した結果、現在ではほとんど問題のないところまで改善されている。

中古車市場でも、かつての悪いイメージのためか比較的安く、ライバルのベンツSクラスより安く手に入る。とはいっても、安心して乗るためには200万円を最低予算としたい。

ただし、販売店網はベンツほど充実しておらず、台数の少なさから取り扱った経験のある工場が少ないのがネック。正規ディーラーか、腕のいい工場が近くにあることが購入の条件だ。

●2011年現在の追記
この原稿を書いた当時は、ジャガーがフォード傘下となってほぼ10年後。主力モデルのXJシリーズが、80年代に登場したXJ40型から、外見はほぼそのままながら、フォードの手で大幅に手が入れられたX308型と呼ばれるモデルに進化した直後。中古車市場の中心は、まだまだXJ40型だった。それでも、主力モデルのXJシリーズのボンネットを開けると、かつてはやたらと壊れて立ち往生の原因になったリレー(この時代にまだリレーが使われていたこと自体が凄いが)は、カラフルな樹脂カバーのついた最新型になっており、本文にある通り日本製のエアコンが装着されるなどして、ずいぶん信頼性は上がっていた。

ただし、ハードウエアとしての出来ばえはある意味時代遅れなおかげで味がある感があった。どこかたてつけがゆるく、しかも設計が古くて重いおかげで、バネ下との相対関係でしなやかな乗り味がたまたま実現されていたような印象だったのだ。

しかし、フォードが本腰を入れた2000年代のジャガーは大きく変わる。アメリカフォードの高級車、リンカーンのシャシーを使って99年に登場したS タイプは、信頼性、走行安定性ともに劇的に向上。04年のマイナーでは内装もよき時代のジャガーの雰囲気に回帰して、乗り味もさらによくなった。

モンデオのシャシーから01年に生まれたコンパクトなX タイプは、フットワークがよすぎてジャガーらしくない感もあったが、手頃な価格と期待を裏切らない木と革のインテリアなどでジャガーを身近なものにした。

そして03年にモデルチェンジした真打ちのXJシリーズは、これぞ新世代のジャガーという出来ばえで世界を納得させた。オールアルミ製の凝ったボディは、デザインこそそれまでの低く、長い印象と異なったため当初不評だったが、乗れば見事に最先端の走りとジャガーらしい乗り味を融合させたもの。各部の立て付けや信頼性なども大フォードグループの沽券にかけて向上しており、メルセデスと真っ向勝負ができる“商品”になっていたのだ。

現在の中古車市場でも、S タイプやX タイプは数は少ないものの、100 ~200 万円程度の予算でそこそこのクルマが流通している。03年デビューのX350型と呼ばれるXJシリーズでも、200 万円の価格でかなりビシッとしたクルマが手に入る。

よき時代の80年代のモデルでも、専門店で探せば、100 ~150 万円程度でV12 エンジン搭載車まで探せる。こちらのほうが近年のモデルより維持に手間や金がかかるのは仕方ないところだが、ノウハウのある専門店なら、この原稿を書いた当時ほど苦労せず、往年のジャガーの魅力を堪能することもできるだろう。

その後も07年に美しい4 ドアクーペフォルムのXFが投入され、09年にはXJがさらに美しいスポーツセダンへとモデルチェンジ。よき時代の英国流のダンディズムやスポーツ心をモダンに表現して、いよいよジャガーネスは新時代へと突入している。これらが中古車市場に出てくるのはまだ先という感じだが、値がこなれてくれば、かなりの人気を呼びそうだ。

ただし、激動する経済状況の下、ジャガーはフォードからついに見放され、08年にインドのタタグループ傘下となった。これでジャガーも終わりだと愁う声もあるが、懇意にしているよき時代のジャガー専門店の主人は、「もともと英国の領地だったインドは、かえって英国らしさをうまく引き出してくれるのではないか」と期待していた。なるほどそういう見方もできるかもと思う。

よき時代の英国らしさを理解したインドの資本の下で、開発・生産は英国で行われ、フォード傘下時代の品質・生産管理が受け継がれるのならば、なるほどこれからのジャガーは、VW傘下のベントレーや、BMW 傘下のロールス・ロイスがどんどんドイツ車的になっていくのに対して、むしろかえっていい意味での英国車らしくなっていくのかもしれないのだ。

2011年7月 6日 (水)

ポルシェの価値は性能ではなく精度

引き続き、僕の著書「国産車の予算でかしこく輸入車に乗ろう」(99年ごま書房刊)より、再録。

第五章 国籍・ブランド別魅力と弱点の研究

ドイツ車

ポルシェ

老若男女、誰もが知っているスポーツカーの右代表、ポルシェ。フロントエンジンのオーソドックスなスポーツカー、944 や928 もあるが、やはり人気の中心は丸っこいボディの後ろに水平対向エンジンを積む911 シリーズだ。

1963年のデビュー以来、97年に水冷化されるまで、基本的な構成はまったく変わらなかったクルマだけに、中古車市場には幅広い年式・価格のクルマが流通している。

乗ってみると、いわゆるスーパーカー的な気難しさは比較的少なく、ヒューズ代わりにあえて弱く作られているクラッチ操作にさえ気をつければ、運転は難しくない。ATならそれもなくトラブルも少ないという。日常スピードなら誰もが楽しめるクルマだ。もちろん、日常を飛びこえた世界(超高速クルーズや限界コーナリング)を試そうとすれば、それなりの覚悟や技術を求められるが、それにしても、神格化されるほど難しい話ではない。

むしろ大変なのが維持そのもので、空冷エンジンでは冷却に重要な役割を果たすオイルの管理、足回りのブッシュ類の交換など、完璧な状態を保たねば価値のないクルマだけに、かかる手間と金は国産車の比ではない。なにしろ、プラグ交換のためにエンジンを下ろさねばならないクルマなのだ( 空冷の964 型まで) 。

ボディはベンツをしのぐ頑丈さだから、たとえ古くてもキチンとした状態にできるが、そのキチンとした状態を保つだけで大変なクルマ、という覚悟で臨みたい。

メンテナンスは正規ディーラー以外にも、マニアックな工場が各地にあり、それさえ確保できれば可能。

ただし、150万円でちゃんとしたポルシェを、というのは残念ながらまず無理だ。

●2011年現在の追記
この原稿を書いた当時、すでに新車の911 は水冷化されていたし、ミッドシップのボクスターも登場していたが、中古車市場の中心だったのは空冷RRの911 。部品代の高さや日本の環境では傷みやすい樹脂やゴム部品、オイル漏れのリスクなど、本当に好きでなければ維持するのは大変というのが実感だったものだ。

たとえば、バルブを動かす部分のタペットと呼ばれる部品は、早いと1万km程度でカチャカチャと音が出て性能も低下してしまい、調整が必要になった。しかもその工賃が正規ディーラーでは数十万円単位だったのだから、庶民にはちょっと勧めにくかった。

しかし2000年代に入り、ポルシェは大きく変貌している。

水冷化後の911 シリーズはモデルチェンジのたびに安定性の高い、乗りやすい操縦性となり、乗り心地も乗用車ライクになった。消耗部品もずいぶん減り、先のタペット調整ももはや不要だから、オプションで用意されるカーボンブレーキのようなバカ高い仕様を選ばない限り、空冷時代のように絶え間ないメンテナンスをしなくても、そこそこの状態が保てるようになっている。

性能を911 より抑えた水冷ミッドシップのボクスターはさらにそうで、とくにベーシックな初代2・5リッター( 後期は2・7リッター) 車なら、パワーに対するシャシーの余裕がある分、乗り心地も維持のしやすさも、かつてのポルシェとは段違いに普通になっている。

VWとの共同開発で生まれたSUV のカイエンや、4 ドアセダンのパナメーラともなれば、( 部品代や工賃は相変わらず殿様価格にしても) 本当に誰にでも乗れるクルマだ。

では、ポルシェはただの乗用車になってしまったのか、と言えば、そうではない。空冷の時代と同じように、このブランドの真骨頂は最高の素材を最高の精度で組み上げた、レーシングカーに近い完全主義の思想にある。

かつてポルシェのグループC レーシングカーには、964 などの刻印が打たれた量産車そのもののパーツがエンジンや足回りに使われていたという。通常のレーシングカーはすべてのパーツを専用設計するのが常識。そこに量産車の部品が使われているということは、量産車の精度や品質がレーシングカーレベルだということ。だからこそ高価であり、高性能なのだ。

そうした思想で作られたクルマは、正しく乗ってやらなければその真価を発揮できない。911 の運転そのものは難しくないとオリジナル原稿で述べたが、せっかくの精度やその結果としての性能を引き出すためには、精度に見合った運転操作をしてやらねばならない。でなければ宝の持ち腐れだ。

精度に見合った運転操作とは、なにも常に全開で限界に挑戦せよ、という意味ではない。曖昧さがまったくないエンジンや足回りの性能を生かして、街中を走っていても路面の状態をステアリングの手応えや挙動から感じ取り、エンジンのもっともおいしい領域を使って精密に走らせること自体を楽しんでこそ、価値があるということだ。

スポーツカーというときのスポーツとは、タイムに挑むような限界領域の話ばかりを指すわけではない。マツダがロードスターで世界に再認識させたように、自身の運転の精度を上げ、思いのままにクルマを操る、乗馬や基礎スキーと同じような意味での“スポーツ”もふくまれる。

そうしたスポーツの楽しみは、きちんと意識さえすればじつは軽自動車でも味わえるのだが、ポルシェは高い精度や技術によってそれをとことん究めて、どんな上級者にも楽しめるようにしているのだ。

加減速に伴う姿勢変化が、ステアリングの利きにどんな影響を及ぼすか、アクセルワークがコーナリングラインをどのように変えるか、ブレーキの踏み方で前後のタイヤのグリップ力がどのように変化するか。ポルシェの高い精度は、そうした情報を正確にドライバーにもたらしてくれる。そうしたクルマからのインフォメーションを感じ取るスキルの習得に悦びを感じられる知性や向上心を持つドライバーのために、ポルシェが存在するという事実には、今もまったく変わりはない。

2011年6月17日 (金)

乗れば意外とよかったオペルと欧州フォードだが・・・

引き続き、僕の著書「国産車の予算でかしこく輸入車に乗ろう」(99年ごま書房刊)より、再録。

第五章 国籍・ブランド別魅力と弱点の研究

ドイツ車

オペル
戦前からGMの欧州拠点として発達した経緯からか、ドイツ車としてはアメリカ的な実用品イメージの強いクルマを作ってきたのがオペル。とはいっても、そこはドイツ人が作り、アウトバーンを走ってきただけに、基本性能はキチンとしている。

内外のイメージは国産車に近く、特別高級ではないがソツのないまとめで、日本人にも違和感は少ない。ただし、逆にこの違和感のなさゆえに、わざわざ選ぶ理由を見つけにくいという、マーケティング上の弱点になっていたかもしれない。

中古車としては実に手頃で、93年からヤナセが販売を担当しているため、サービス面でも不安はなく、一度、輸入車を試してみようか、という人には、うってつけの選択だろう。

ただ、ヤナセが売る以前の販売実績が少ないため、とくに地方に行くと受け入れてくれる工場が少なく、結果として適切なメンテナンスができずに維持しにくい、ということはあるかもしれない。数が少ないだけに、トラブル情報なども少ないのだ。メカニズム的にはオーソドックスだし、信頼性も高いはずだから、ヤナセが近くにあるなら、という条件になってしまうかもしれない。

ドイツフォード

GMの欧州戦略の核がオペルなのに対して、フォードが自前で作った現地メーカーがドイツフォード。日本にはモンデオが導入されている(1999年現在) 。

成り立ちから言っても、製品の味つけはオペルに近く、デザインも走りもこれといったイヤ味のない、日本人にもなじみやすいもの。仕上げや質感もいい。ちなみにモンデオの生産はベルギー工場で行われている。

フォードの販売網は、リンカーンなどの高級車を中心に扱っていた近鉄モータース系と、マツダが作ったオートラマ店を前身に持つものを合わせれば全国をネットしており、購入してからの不安も少ない。

中古車としても、オペル同様地味なイメージからか手頃な価格で狙え、国産車から乗り換えて経験してみるにはいい選択となるはずだ。

●2011年現在の追記
今やオペルは日本市場から完全撤退し、フォードも現在ではアメリカンモデルメインにシフトして、欧州フォード車は風前の灯火だ。

僕はよく記事中ではオペルとフォードをドイツのトヨタと日産と表現していた。実際、欧州ではまさにそういう位置づけの大衆ブランドだが、トヨタや日産が大衆ブランドといえども作りのよさや豊富な装備を誇り、2000年代以降、走りも欧州ブランドと遜色のないレベル(コンパクトクラスではとくに)に到達した今では、日本人にとってはただのやけに高いクルマになってしまった感はある。

フォードは2000年代に入り、先鋭的なデザインや日本車に負けない質感を実現して巻き返してきたのだが、ときすでに遅しだった。オペルもキムタク主演のTVドラマでヒロインの常磐貴子がヴィータに乗ったことで一時は沸いたが、継続的な人気にはならなかった。

VWやメルセデス、BMW やアウディが、本気で日本市場を攻略すべく、日本国内での耐久信頼性実験やメンテナンス無料化などによるデータ収集で日本でも使いやすく、信頼性の高いクルマ作りに務めたのに対して、オペルやフォードはいまいち殿様商売で、大衆車のクセして日本の環境では壊れやすかった、ということもある。実際、これらは細かなセンサートラブルとかマフラーの腐り、インテリアの樹脂の割れといった、つまんないトラブルが多かったのだ。

今でも状態のいい中古車のオペルヴィータやフォードフィエスタなどに乗ってみれば、シートのよさや高速走行向きの落ち着いたハンドリング、洒落たデザインなどが堪能できるが、なにしろ売れないため、国内には中古車自体がほとんど流通していない状況だ。

安くて実用的な、冷蔵庫のようなクルマを作らせたら、今や日本は世界一。だからこそ、そうなってしまったのだが、果たして日本人もいつまでも冷蔵庫みたいなクルマばかりで満足し続けることができるのだろうか。今こそ、コンパクトでも味や個性のある、オペルやフォードのような大衆ブランドが、あって欲しい気もする。

2011年2月14日 (月)

ちょうどいい立ち位置を得たアウディ

引き続き、僕の著書「国産車の予算でかしこく輸入車に乗ろう」(99年ごま書房刊)より、再録。

第五章 国籍・ブランド別魅力と弱点の研究

アウディ
普通に乗るならシンプルなグレードがお勧め

丸みを帯びた優美なデザインで、女性からも人気のアウディだが、乗ってみるとまぎれもなくドイツ車という硬質感を感じる。ボディはしっかりと、頑丈に作られ、高速道路などを走ると、ビシッとしたステアリングの手応えにビックリするほどだ。

タテ置きエンジンのFFというレイアウトをはじめ、技術的にも独自のこだわりを持ち、かつては世界選手権ラリーにフルタイム4WD方式をいち早く持ち込むなど、その内容は高度だ。

もっとも、そういった高度なメカニズムは往々にして気むずかしく、メンテナンスにも手間がかかることから、結果として信頼性に欠ける、という評価を受ける場合もある。4WDのクアトロや、先進技術を満載した先代の100シリーズなどは、うっかり程度の悪い中古車を購入すると手間がかかって大変だ。

一般のユーザーが普通に使うなら、2ℓエンジンを搭載する、ごくオーソドックスな中型セダン、80シリーズがいい。それも91年からのモデルなら、ATも4速だし、トランクも広く、使い勝手もいい。150万円だと、92年式あたりの80が狙えるだろう。

●2011年現在の追記
昨年の後半からやけに忙しくなってしまい、更新が途絶えていました。久しぶりの書き込みです。

で、アウディ。こんな不景気にもかかわらず、新車は世界で売れているし、中古車も今、ホントに旬になってきた。03年デビューのA3や05年登場の先代A4あたりが、今なら150 万円も出せばかなりいいクルマが買える。

その人気の秘密は、ちょうどいい立ち位置にあるのだろう。高級車でござい、という印象があるメルセデスはこのご時世に乗りにくいし、BMW はもはやありふれた存在になってきた( 普通の庶民にとってもそういう感覚になったという事実が凄いが) 。そこで、世間の目はメルセデスほど気にならなくて、BMW より新鮮、しかも上品さやハイメカのイメージもあるアウディが選ばれる、と。

ただし、12年前と同様に、中古車として普通の人が乗るなら、高性能な車種やグレードは勧めない。これまでにも書いてきた通り、相変わらず欧州の高性能車は乗り手に責任と資格を問う。V8の4 .2リッターをミドルクラスのA4のボディに押し込んだS4などは、完調ならたしかに気持ちいいが、大排気量エンジンのすさまじい熱量を考えると、真夏に渋滞にハマっているだけで樹脂やゴム部品がみるみる傷んでいくはずだ。そういう部分にきちんとお金をかけて乗れる人にはいいが、憧れとか見栄だけで中古車を選ぶにはリスクが大きいだろう。

それと、ドイツ車に共通の紫外線に対する弱さも、アウディはとくに目立つ気がする。メッキは曇っている中古車が多いし、質感の高いインテリアも、キーホールの周囲とか空調吹き出し口などの手がよく触れる部分は、表面が傷んで下地の樹脂が顔を出しているクルマも見た。新車では上質で精緻な作りだが、こうした耐久信頼性に関しては、やはり日本車が世界一なんだなと思わせる。

そういうわけで、あまりマニアックにこだわったり、高級車らしさを求めるのではなく、VWゴルフとはひと味違うハッチバックとして、ゴルフの兄弟であるA3の普通のグレードを選ぶとか、国産ミドルクラスセダンの新車を買う感覚で、サラリとFFのA4の中古車を買えば、きっと国産車では味わえない満足や楽しさが味わえるはずだ。

2010年7月16日 (金)

VWのキャラはこの20年で大きく変わった

引き続き、僕の著書「国産車の予算でかしこく輸入車に乗ろう」(99年ごま書房刊)より、再録。

第五章 国籍・ブランド別魅力と弱点の研究

VW
00年代のモデルは昔とは別物の仕上がり

かのヒットラーの国民車構想以来、大衆のための最良の道具として作られてきたのがフォルクスワーゲン。上級のパサートなどもあるが、日本でVWと言えば、やはりゴルフが基本だろう。

このクルマを高級車として買う人は少ないだろうが、ボディのしっかりした作りは、かのメルセデスベンツに勝るとも劣らない。エンジンや足回りの味つけもメルセデスに近い路線で、特別高性能ではないがタフなエンジンと、スポーティではないが徹底的に安定指向の足回りは、小さくとも最良の道具として理想を目指したことを感じさせる。

二代目までは、その道具っぽさが日本人には安っぽさにさえ見えることがあったが、92年からの三代目では内装の質感やデザインも向上し、たとえばカローラと比較しても納得いくものになっている。

もとがシンプルなクルマだけに、特別なウィークポイントはないが、バルブを動かすタイミングベルトなどゴム部品は、国産車(10万㎞)より早めの交換が安心。アクセサリー類は比較的弱いのは輸入車各車共通か。

小さくとも、キチンと作られたクルマの見本として、また小さくてもビンボー臭くないクルマとして、乗ってみるには好適だろう。

●2010年現在の追記
この原稿を書いた後、00年代のVWはさらに大きく変わった。98年に登場した四代目ゴルフでは、ドアやボンネットの隙間の小ささといった、日本車的な商品力にも力を入れ、車内の騒音や樹脂類の質感などの、世界一細かいところにうるさい日本人をも納得させるクルマに仕上げてきた。

04年登場の五代目、09年登場の六代目はその集大成。歩みを同じくして弟分のポロやセダン版のジェッタ(世代によりヴェントやボーラなど名前が変わる)も日本車感覚のクオリティと装備類を身につけた。最近では、さらにSUVのトゥアレグ(03年)やティグアン(08年)などもラインアップ。ますます日本車とがっぷり四つの商品企画とラインアップになってきている。

乗り味も年々かつてのどっしり、ずっしりのドイツ車感覚から、日本車的な軽快感をも身につけてきているが、それでも、長く乗っても疲れないシートや安定したハンドリングなど、VWらしい美点は健在だ。

トゥアレグやティグアンは中古車市場でも人気でやや高いが、それ以外のモデルはじつにお手頃な価格で上質車が出回っており、お試しで乗ってみるには好適。ただし、基本的には丈夫なクルマだが、電気系統や細かな造りにはやはり日本車にはかなわない部分もあり、日本車のような乗りっぱなしは許してはくれない。大金がかかることはまずないが、それなりにきちんとメンテナンスするつもりで味わってやりたい。

ちなみに高性能な上級グレードより、シンプルなベーシックグレードのほうがそうしたリスクもより低いはずだ。

2010年6月11日 (金)

BMWはメンテナンスが味の決め手

引き続き、僕の著書「国産車の予算でかしこく輸入車に乗ろう」(99年ごま書房刊)より、再録。

第五章 国籍・ブランド別魅力と弱点の研究

BMW
乗りっぱなしでは本来の味は台無し

メルセデスベンツのライバルメーカーとして、日本でも高級イメージが浸透しているのがBMW。バブルの頃は、「六本木のカローラ」などと称され、事実遊び上手を気取る人が乗ることが多かった。

その特徴はメーカー自身が意図したもので、メルセデスがエグゼクティブの最高の移動道具なら、BMWはアクティブなエグゼクティブが移動そのものを楽しむ道具、という付加価値がアピールポイントなのだ。

その一番の特徴はエンジンで、航空機エンジンメーカーがルーツのBMWのエンジンは、絹のようだ、と讃えられる滑らかな回転フィールを持ち、ドライバーの操作を積極的に受け入れるスポーティな足回りとあいまって、運転自体が快感になるような味つけをされている。

ボディのしっかり感はメルセデスほどではないが、基本に金のかかった作りなのはメルセデス同様。もっとも、アクセサリーが弱いのもメルセデス同様。

ただし、味わいが付加価値ということは、各部の消耗でその味が薄れてしまうと価値も薄れるということ。事実、足回りのゴムブッシュなど、消耗品のメンテナンスを怠るとたちまち乗り味は悪くなる。サイズ違いのタイヤや安直な車高ダウンによる操縦性の悪化も顕著。デリケートに面倒を見てやる必要がある。

中古車としてはメルセデスより手頃な価格で狙えるが、その分、魅力を十二分に味わおうと思ったら、オーナーが積極的に手と金をかける必要があるだろう。それもこれも、趣味のため、と納得できる人に勧めたい。

●2010年現在の追記
バブルのころまでは、BMWというブランドは日本では普通の人にはいまいち知られておらず、「ブタみたいな鼻のついたクルマ」みたいな言われかたをしていたものだが、認知度が上がった今では、「メルセデスほど周囲の目が気にならないし、クルマ好きだから買ったという言い訳ができるから」と、普通のサラリーマンも抵抗なく乗るようになっているのはご存じの通り。

ただし、10年前に書いた通り、このクルマの命は繊細な乗り味にあることは今なお変わりなく、きちんとメンテナンスしないと味が損なわれてしまうのも変わっていない。

にもかかわらず、このクルマにはローダウンや太いタイヤを履かせるなどのドレスアップをしたクルマも多い。スポーティなイメージゆえなのだろうが、スプリングをぶった切って太いタイヤを履かせただけ、といった乱暴なドレスアップをしては、BMWに乗る価値はまったくなくなってしまう。

きちんとしたノウハウのある工場なら、ローダウンで角度が変わったサスペンションアームに合わせてブッシュの向きを変えたり、アライメントを適正化したりといった、味を損なわないドレスアップもしてくれる。そういう工場を持つお店でなら、いじりものを買ってもいいだろう。

しかし、せっかくBMWを買うのなら、とりあえずノーマルできちんとした状態に整備して乗ってみることをお勧めしたい。そうすれば「この味はなんで国産車に出せないんだろう」と考えるきっかけにもなるはずだ。

じつは現在では出せないんじゃなく、きちんとした味を出すにはお金がかかる割に、お客さんにはわかってもらえないから出さない、というのが正しいと僕は考えている。中古車でBMWを試してみて、走りの味の違いを理解する人が増えれば、国産車メーカーだって「ウチだってできますよ」とお金をかけてオリジナルの味を提供できる時代になるのだと思う。結局、客の目が肥えなきゃ、いい商品というのは出てこないのだ。

2010年6月 7日 (月)

メルセデス本来の姿は実用車

引き続き、僕の著書「国産車の予算でかしこく輸入車に乗ろう」(99年ごま書房刊)より、再録。

第五章 国籍・ブランド別魅力と弱点の研究

メルセデスベンツ
日本車的な高級感の演出は近年になってから

日本人の誰に聞いても、一度は乗ってみたいクルマの筆頭に上げられるのがこのクルマだろう。自動車を発明し、育てて来たメーカー、という伝統や信頼もさることながら、やはり世界のエグゼクティブに愛用されたことによる「お金持ちのクルマ」としてのイメージが人気の理由だ。

ところが、乗ってみると必ずしも日本人が想像するところの「高級車」のイメージとは一致しない。内装の質感などは年々向上し、最新型では価格に見合った高級感も与えられているが、80年代までのモデルとなると、内装材はアッサリしていて、むしろ色気のなさばかりが目につくし、アクセサリーも比較的シンプル。しかもそれが意外と壊れやすい。エアコンやパワーウインドーもダメになることが多かったのだ。

それというのもメルセデスベンツというクルマは、そもそもは何でもついている高級車としてではなく、高い安全性と必要十分な性能を持ち、丈夫で長持ちする最高の移動道具であることを目標に作られてきたから。

日本では最高グレード車ばかりが注目されるが、欧州ではディーゼルエンジンの実用グレードもよく売れているし、パワーウインドーもないマニュアル車がタクシーとしてたくさん走っていることでもそれはわかる。実用車こそ、本来の姿なのだ。

国産高級車のような豪華さではなく、走る箱として考えれば、いまだにメルセデスベンツのボディの頑丈さは国産車の比ではないし、官能的とは言いかねるエンジンの特性も、アウトバーンを長時間クルージングする時、ドライバーを疲れさせないための意図的な味つけであることがわかる。

中古車として狙うに当たっても、それを理解して臨むべきだ。何でもついてる最高級グレードを格安で、と考えると、次から次へと細かなトラブルが続いてイヤになってしまうこともありえる。クルマとしての作りは抜群でも、こうした細かい部分は日本車の方が上だからだ。

ウィークポイントとしては、ドイツ車に共通の問題として、ゴム部品の寿命の短さが挙げられる。エンジンルーム内のホース類や窓まわりのシール、それに駆動系のショック緩衝部品であるディスクジョイントやエンジンマウントなど、国産車とは比較にならない位ヘタリが早い。

もっとも、エンジンマウントやディスクジョイントは、メーカー自身、消耗品と考えているフシがあり、早めに交換することで、常に新車の味を保つ、という狙いもあるようだ。

基本的なメカニズムは丈夫だから、こうした特性を理解して乗ってやりたい。

●2010年現在の追記
この原稿を書いた当時は、角張ったスタイルのW124型と呼ばれる先々々代Eクラスが中古車市場の中心。丸目の個性的なマスクを持つ、W210型の先々代Eクラスは大人気だがそのぶんやたらと高価だったころだ。

で、このW210型以降、メルセデスベンツのクルマ作りはガラリと変わった。それまでの、最高の材料を使い、理想的な設計をする代わりに、ユーザーがつねに手を入れて新車の状態を保つことを強いるクルマから、合理的な設計でコストダウンを図る代わりに、見た目の高級感はむしろ増し、消耗部品も減らして、なるべく手間がかからないクルマへと変身したのだ。

とくにV型エンジンが搭載される98年あたりからの後期モデルなら、信頼性も維持費も国産車に迫る。本文にあるディスクジョイントやエンジンマウントも、10万kmぐらいは交換する必要がなくなった。アクセサリー類の信頼性も見る見る向上し、電動格納ドアミラーも安心して使えるようになったし、エアコンが壊れるという話もとんと聞かなくなったのだ。

当時はそれを堕落したと指弾した専門家もいたものだが、10年前のW210型の中古車に今乗ってみると、ちゃんとメルセデスの味が保たれていることにびっくりする。状態のいいクルマなら、ドアの建て付けからサンルーフのスムーズな動き、足回りの機能まで、国産車じゃ絶対にこうはいかないな、という作りのよさが生きているのだ。

スポーティなハンドリングや見た目にわかりやすい高級感の演出、衝突相手の被害まで計算した安全性など、変えていいところ、変えるべきところは変えたけれど、丈夫で長持ちする理想の実用車という本来の個性は、きちんと守られていたというわけだ。

だからきちんと手入れすればいつでも新車の状態にリセットできるというメルセデスの伝統も健在だ。まあ現実問題として、いまどきわざわざ10年前のW210型メルセデスをありがたがって金をかけて乗る人はそうはいないはず。むしろ、よき時代と呼ばれる、例のW124型の時代のモデルを手に入れて、コツコツと手を入れながら乗ろうという趣味っぽい人のほうが多いだろう。

ちなみに、メルセデスの本来の姿を今でもそのまま見られるのは商用車だ。このメーカーは過去から現代にいたるまで、世界最大の商用車メーカーでもある。

圧巻はアクトロスという車名のメルセデスの大型トラック/トレーラー。ボディの鉄板の上質さをうかがわせるシャープなプレスライン、定評のあるセダン以上にしっかりと作られたシートなど、ああ、これが最高級の実用車ということなんだな、ということがわかるだろう。実際このクルマは、100万kmぐらいは余裕で走る。オーディオやら空調やらといったアクセサリーは、あくまでも後からつけられた付加価値。そんなものじゃクルマの価値は決まらないよ、というメルセデスの声が聞こえてきそうだ。

79年に登場以来、今日まで同じデザインを保つオフローダーのGクラスも、もとはそういうクルマだった。いわゆるセレブご用達になって、最近ではやたらと頑丈で高価な乗用車でしかなくなった感があるが、本来のこのクルマは究極の万能車。ゆえに直線で構成されたGクラスのボディの面の上質感などには、やはりアクトロスのそれと通じるものがある。

2010年6月 6日 (日)

国籍・ブランド別魅力と弱点の研究-ドイツ車

引き続き、僕の著書「国産車の予算でかしこく輸入車に乗ろう」(99年ごま書房刊)より、再録。

第五章 国籍・ブランド別魅力と弱点の研究

ドイツ車
日本人好みのかっちりとした作りが魅力

日本の輸入車市場において、もっとも人気があり、また販売台数も多いのがドイツ車だ。その理由として、ゲルマン的と称される、いかにもち密で、かっちりとしたクルマ作りが、きちょうめんで真面目な日本人の性格に合っている、ということがある。良質の素材を使い、内外の仕上げもキチンとなされ、その上アウトバーン育ち、という高性能イメージも人気を後押ししている。

早くから日本向けのマーケティングに力を入れ、販売店網の整備や広告戦略に取り組んできたことも大きい。おかげで一部の特殊なクルマを除けば、日本全国どこで買ってもアフターサービスも安心だ。

●2010年現在の追記
じつのところドイツ車はそのち密さゆえに以前はいまひとつ日本では乗りにくかった。ドイツ本国での使い方にキリリと合わせたち密な設計だったために、その想定と大きく違う日本の使い方ではトラブルが起きやすかったのだ。

ゴーストップの多い使い方ではATがたちまち滑り出したし、据え切りを繰り返すと足回りのブッシュも傷みやすく、せっかくの乗り味が台無しになった。

80年代のBMWの7シリーズなどは、アクセル開度を監視するセンサーに、ごていねいにアイドリング位置の接点があり、日本ではよく見かける、料亭の前でご主人様を待って運転手が延々とアイドリングしながら待つような使い方では接点が焼けて不調を来たし、高価なスロットルボディをそっくり交換しなければならなくなったりしたのだ。91年に出たメルセデスベンツの先々代Sクラスでも、電磁波に対するシールドが弱く、自動車電話や違法無線のノイズなどで車載コンピュータがいかれて、これまた数十万円コースの部品交換ということもあったと聞く。

それらが改善されるのは、おおむね90年代後半以降のモデルから。現在の中古車市場のメインを占める00年代のモデルなら、ちゃんと日本の使い方や環境に合わせた設計がされているが、その一方で、昔と比べるとドイツ車らしいかっちりとした乗り味は、やや希薄になっている感もある。長年ドイツ車をお手本にしてきた日本車が、かなりよくなったこともあり、相対的に、日本車から乗り換えてもあまり大きな違いを感じにくくなっているのだ。

とくに上級モデルほどそういう傾向はある。もちろん日本では許されないような超高速域の走りなどは、さすがと思わせるレベルなのだが、街中をのろのろと走っている分には、普通の人には違いを感じにくいだろう。むしろ商品企画やコスト、設計上の余裕の点で、日本車では真似のしにくいコンパクトカーのほうが、今なおドイツ車らしいしっかりした乗り味を感じやすい。

個々のブランドごとの特徴に関しては、次回以降で詳述していくことにしよう。

2010年6月 4日 (金)

輸入車の魅力は地方のほうが発揮できる

引き続き、僕の著書「国産車の予算でかしこく輸入車に乗ろう」(99年ごま書房刊)より、再録。

第四章 あなたの満足度は使い方次第
-中古輸入車を楽しむために知っておくべき乗りこなし術

6 ・輸入車の魅力は地方のほうが発揮できるのだ

今の輸入車の需要は、都市に集中している。地方ではまだディーラーの数も少ないし、何よりかつての「輸入車はお金持ちの乗り物」という呪縛から逃れていないことから、世間の眼を気にする保守的な地方では買いにくいのかもしれない。しかし、本当は地方でこそ、輸入車はその本来の魅力を発揮することができるのだ。

都市部に住む、普通のサラリーマンがマイカーに乗る機会は、ほとんどが週末だろう。普段は電車で通勤し、仕事にマイカーを使うことも少ないはずだ。しかも、たまに使っても近所への買い物とか、近場へのレジャーの足、といった近距離が多いことだろう。

これまで述べてきたことから想像できる通り、じつはそういった使い方は、輸入車にとってはあまりふさわしくはない。

道路網が完備され、長距離高速走行が日常のヨーロッパ。広大な国土を持ち、どこへ行くにもクルマがなければ始まらないアメリカ。どちらを見ても、クルマは毎日のように使われ、しかも走り出したらある程度の距離を、ある程度のスピードで走ることが当たり前の環境だ。そんな国で作られたクルマたちが、狭い街中で、ゴーストップを繰り返すばかりの道路環境を好むわけがない。

それに引き換え、地方へ行けば、クルマはその生まれた環境に近い使い方をしてもらうことができる。毎日の通勤に使うことも多いだろうし、いくら混んでいるといっても、東京のように止まりっぱなしというわけではなく、ある程度はクルマが流れる環境で使ってやることができる。もちろん、渋滞知らずの高速道路を走るなどお手のものである。

都市部でしか輸入車が売れない状況は、まだまだ日本人がそれを特別視していることの証明だ。輸入車はそんな偏見をなくし、自分に合った道具として使ってやってこそ生きる。それを堂々と実践する人が地方にも増え、そのよさをみんなが分かるようになったとき、日本人は本当の国際化とは何か、を発見することもできるのではないだろうか。

なにもイバれる高級車ばかりが輸入車ではない。自分の個性や使い方に合った、自分なりの魅力を感じられる一台を、決して無理をせずに乗る。現在の中古輸入車事情なら、十分それが可能だし、そうなって初めて、国産車と輸入車のフラットな評価ができ、国産車の、そして輸入車のそれぞれ優れたところ、至らないところを公平に判定できるようになるのだと思うのだが……。

●2010年現在の追記
この原稿を書いてから10年。最近では地方でもずいぶん輸入車を見かける機会が増えているようだ。「輸入車中古車情報」の読者からも、以前は「VWゴルフを買ったけど、近所の目が気になるので遠くの駐車場を借りました」などという地方からの声があったものだが、最近ではもっとも保守的なはずの地方の市役所勤めや公立学校の先生などが、メルセデスベンツの中古車を買っていくことも多い、と中古車屋さんでも聞く。

クルマというのは本来、使い方や個性にあったものを選ぶのが筋であって、周囲の目や流行りで乗るものじゃない。流れの速い街道を、いやでも毎日数十kmの距離を通勤で乗るような人が輸入車を買えば、その安定した乗り味やシートの出来ばえに、きっと「買ってよかった」と思えるはずだ。逆に都市部の狭い道路を週末に数km乗るだけ、という人なら、軽自動車や、これからの時代なら電気自動車などのほうが合っているかもしれない。

輸入車か、国産車かではなく、そんなふうにごく自然に、自分のニーズや個性、好みに合ったクルマ選びをしてこそ、成熟したカーライフが送れるというものだ。そして21世紀の日本人は、ちゃんとそれができるようになっていると思う。

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