カテゴリー「お気に入りの仕事」の3件の記事

2020年5月 3日 (日)

久しぶりに新刊出来。

204_20200410_122906 最近は商業誌の仕事が減る一方で、企業ウェブなどのコピーライティングの仕事がちょこちょこ増えている。ただし、そちらは名前も出ないし、みんなで寄ってたかって書く感じなので、活字屋としてはもうひとつ、やったった感が薄い。まあ、それも大事なお仕事なのだけれど。

そんな中で、久しぶりに一冊まるごとやったったぜ!と思える増刊号が出た。「月刊自家用車」(内外出版社刊)で昨年から連載していた「名車の商品企画室」という記事をまとめて、その他の関連企画の再録も添えた一冊。じつは3月末に発売されていたので、今さら、なのはご勘弁。我ながらホントにセルフプロモーションができないヤツです。

内容はスカイラインやシルビア、ギャランやマークⅡやアルトにシャレード、RAV4まで、エポックメイキングなモデルの歴代を時代背景なども交えて論考していくもの。クルマの「評価」ではなく、作り手が何を狙い、客はそれをどう受け止めたのか、という商品企画をコミュニケーションの側面から見た読み物。

芸文社から隔月で出ている「ノスタルジックヒーロー」が、30余年前に僕が企画制作した増刊号がルーツなのは、今やあんまり知る人もいない(これもPRしてないんだから当然か)が、輸入車中古車情報といい、ノスヒロや今回の増刊といい、どうやら僕は最新情報を追いかけるより、温故知新的な仕事の方が性に合っているらしい。

というか、最近の新車はシステマチックに狙い澄まして企画されているので、外れも少ない代わりに面白みもない。営利企業としてはそうじゃなきゃ困るんだけど、作り手の想いとか、ある種「やったろうじゃん!」という勢いで生まれた時代のほうが、人臭くて面白いよね。ハードウェアとしては世界一レベルに到達したからこそ、これからの国産車には、作り手の想いや熱さを大事にしてほしいと思うのです。

よろしかったら、巣ごもりのお供に読んでやってくださいませ。

 

 

2016年6月27日 (月)

新刊出来!

本日627日、久しぶりに白紙からプロデュースを手がけた媒体がモーターマガジン社から発売された。タイトルは「輸入車道楽 SHA LUCK」だ。

 

そもそもは、このブログの元ネタになった「輸入車中古車情報」(内外出版社刊)が、2015年早々に休刊してしまったのがコトの始まり。じつは同誌は14年暮れに僕の手を離れ、創刊以来続いてきたB5版の週刊誌スタイルからA4版のビジュアル誌の体裁にリニューアルし、誌名も変えたものの、結局部数も広告も失い、ビジネスが成り立たなくなってしまったのだ。その経緯にはいろいろと言いたい事もあるが、それをここで言っても仕方ない。

 

創刊以来ずっと育ててきた我が子のような媒体を失ったのは、想像以上にダメージが大きかった。そこで新しい版元を求めて営業を始め、乗ってくれたのがモーターマガジン社さん。とは言っても、また同じような誌面を作っても、ウェブ全盛の今の時代に売れるとは思えない。では、どんな誌面にするべきなのか。その検討だけで1年近くを要してしまった。

 

結果、目指したコンセプトは「輸入車生活実現マガジン」だった。じつはこれは「輸入車中古車情報」が当初から目指したものの、明文化されてはいなかったコンセプトにほかならない。

 

旧媒体を創刊した20数年前には、そのコンセプトで輸入中古車を買おうとする人の不安を払拭し、国産車とは違う輸入車とのつきあい方を伝えることを目指した。今度の誌面でも、底に流れる思想は同じだが、見せ方は全然違う。当時と比べると、今や輸入車はずっと身近な存在になっているし、その気になればウェブでいくらでもオーナーたちが発信する弱点やつきあい方などの情報は得られる。では、ウェブでは手に入らない、活字ならではの情報はなにか、というと、責任ある書き手による、売り手の素顔を伝える記事だと思った。

 

店頭に足を運んで売り手の肉声を聞き、その店の想いや姿勢を伝える。その泥臭い、けれどジャーナリズムの基本に忠実なやり方は、膨大な情報の中からピンポイントで欲しいクルマを瞬時に探し出せるウェブでも、いや、だからこそできないことだと考えた。同時に、パラパラとめくるうちに、それまで思ってもいなかった魅力的なクルマと出逢える、活字ならではの絵本のような楽しさも盛り込みたいと思った。たぶん、その狙いは実現できたのではないかと思う。

 

できれば本屋さんに足を運び(残念ながら実績のない本誌がコンビニに並ぶ事は当面はないと思う)、買ってもらえたら嬉しい。感想を聞かせてもらえれば、もっと嬉しい。

 

ちなみにPRを兼ねて、ウェブサイト「ロレンス」でも、記事のダイジェストを掲載している。立ち読み代わりにどうぞ。

http://lrnc.cc/_tags/sha-luck

2011年10月14日 (金)

日本人って、やっぱりスゴい

昨夜(10月13日) 、NHK の番組「セカイでニホンGO! 」の中で、世界一の計算速度を達成したスーパーコンピュータ、「京(けい)」が取り上げられていたのをご覧になった方も多いだろう。事業仕分けで「二番じゃダメなんですか? 」という名文句(?) が話題になったアレだ。

番組では、メーカーの開発者が数人登場して「京」を支える技術のほんの一部を披露していたが、NHK らしく、会社名は最後まで出さず、ごていねいに「京」の筐体に記されたロゴマークまで巧妙にカットしていた。なのでここで書いておくが、「京」を開発( 理化学研究所との共同開発) ・製造したのは富士通だ。じつは僕は7年ほど前から、富士通の半導体部門(「京」に使われるCPU も生産) である富士通セミコンダクターが発行する技術情報誌「FIND」の巻頭企画の取材・執筆をさせていただいており、この夏には「京」の開発エンジニアたちにも直接インタビューしたのだ。

人物インタビューを読み物に仕立てる仕事は、僕の得意分野。メインの仕事であるクルマの記事でも、いわゆる自動車評論家諸氏のような新車に乗っていいの悪いのと感想文(いわゆるインプレッション)を書くのではなく、開発エンジニアにじっくり話を聞いて苦労話やアピールポイントを読み物に仕立てる仕事が多い。もっとも、富士通さんの仕事では、ふだんは巻頭企画で芸能人や有名人、文化人などにインタビューする仕事がレギュラー。これまでスタジオジブリプロデューサーの鈴木敏夫さん(09年) や大河ドラマ「竜馬伝」の題字を書いた書家の紫舟さん(05年) 、経済評論家の森永卓郎さん(07年) を始め、多くの話題の人物をインタビューさせていただいた。最新号でも歌手・女優として知られる佐良直美さんに、犬の躾けの話をうかがっているのだが、今回はそれに加えて「京」の開発エンジニアへの取材を依頼されたのだ。

内容は「FIND」のウェブ版でご覧いただきたいが、日本を代表する企業のトップエンジニアの話を訊くと、つくづく日本って凄い国なんだなあ、といつも思う。どのエンジニアも、けっしてドヤ顔をしたりせず、自分のなした仕事について淡々と話すのだが、そのレベルの高さや気配りの深さがハンパないのだ。これは日頃多く接する自動車エンジニアもコンピュータエンジニアも同じだった。

欧米では、先日亡くなったアップルのスティーブ・ジョブス氏のようなカリスマ的なリーダーが企業やトレンドを牽引していくケースが多いが、ここ日本では、彼らのような名もなき人々がそれぞれにベストを尽くし、結果として凄い仕事をなし遂げるのがある種の文化なのだとあらためて思う。

逆に言えば、だからこそリーダーたる政治家がアテにならなくても国が傾かないわけで、それがいいのか悪いのかはビミョーな問題ではあるのだが、なんというか、日本人全体が持つ底力において、僕らはもっと胸を張っていいのだろうとは思うのだ。

震災や原発事故でてんやわんやの状況にありながら円高が進むという状況も、世界がそう思っているからなのかもしれない。ならばそれに応えてやろうじゃないか。前を向き、胸を張り、自分にできることを淡々とやり続ければ、きっと凄いことができる。エンジニアたちに取材するたびに、僕自身もそんな前向きな気持ちになれるのだ。